日本外交文書
東學黨ニ關スル件

事項八 東學黨ニ關スル件

二○三 四月一日

東學黨上京建白書ヲ奉呈ノ件

四月十日接受

在京城帝國公使通常報告第十一號

東學黨建白書ヲ奉呈ス

慶尙全羅忠淸ノ三道ヨリ東學派ノ者(通常報告第九號參觀)
過日來陸續入京幾ント一萬人ニ近カルベシトノ風說有之候
尤モ去月廿五日ハ世子宮誕辰日ニ相當シ慶科ト唱フル科擧
ヲ施行セラルヽヲ以テ八道ノ學徒之ニ應セントシテ續續京
城ニ群集スルノ際ナレバ東學派カ之ニ混同シテ上京スルニ
ハ最モ便宜ナル時機ナリ依テ彼黨派ハ世子宮誕辰日迄ニハ
孰レモ着京城郭ノ內外各所ニ散宿シ各氣脈ヲ通シ終ニ去月
廿七日ヲ以テ宗徒中ノ重ナル全羅道住人朴升浩ナルモノハ
一片ノ建言書ニ敬天正心保國安民トノ八題字ヲ大書シ部下
八拾名ヲ卒イテ闕門ニ進ミ伏テ執奏ヲ促セリ當國ノ慣例ト
シテ通常人ノ獻言書ヲ奉呈セントスル者アレバ之ヲ採納セ
ラルヽ迄晝夜闕門前ノ土上ニ伏シ請願スルノ法ナリ去レハ
朴升浩等モ連日闕門ニ伏首シ漸ク去月三十一日ニ於テ右建 白書ハ上覽ヲ賜ルヽ旨ヲ以テ採納セラレタリ此ニ一同ハ一
ト先ツ宮門ヲ辭シ退テ其命令ヲ待チ其處置ノ如何ニヨツテ
進退ヲ決スヘシト云ヘリ今其建白書ノ主要ナリト云ヲ聞ク
「敎祖崔濟愚(福述トモ云フ)ノ善行ヲ是認シ其非命ノ死
ヲ弔ヒ祠ヲ建テ祭ヲ存スルコト竝ニ該宗敎ノ禁令ヲ解キ布
敎ヲ公許スルコト」ノ二ケ條目ナリト云フ此ノ不當ナル請
願ハ到底當國政府ノ容ルベキ所ニアラサルモ如何セン該宗
徒多衆動スレバ暴力ニ訴ヘントスルカ如キ意氣込アルヲ以
テ國王殿下ヲ始メ政府大臣ニモ其處置ニ付大ニ憂慮セリト
ノ事且ツ彼等ノ或ル者ハ揚言シテ曰ク若シ國王殿下ニシテ
願意許容セラレザルニ於テハ國內ニ在ル耶蘇派西人ハ悉ク
驅ツテ國境外ニ逐斥スベシトノ妄言ヲ吐キ虛喝ヲ試ミルモ
ノ有之トモ云ヒ又一說ニハ建白書中ニ西人ヲ非難シ耶蘇敎
ヲ痛擊シタル文言モアリトモ云ヘリ尤モ卽今ノ模樣ハ至ツ
テ溫順靜謐ニ政府ノ指令如何ヲ待ツモノヽ如シ

八道ノ學徒建白書ヲ奉呈セントス

世子宮誕辰ノ慶典ニ基キ施行セラレタル慶科ニ應スルカ爲
メ上京シタル八道ノ儒生ハ此頃檄文ヲ發シ科規不正ナルカ
爲メ不公平ノ事多シト極論シ君側ノ奸臣ヲ攘ツテ積弊ヲ掃
除スベシト主張シ相ヒ連合シテ一ノ建言書ヲ奉呈スベシト
云フ一說ニ東學黨ハ此際金錢ヲ贈テ之ヲ敎唆シ暗ニ其聲援
ヲ爲サシムルモノナリト云フモノアレトモ眞疑ノ程ハ未タ
審ナラズ

右報告候也

廿六年四月一日

在京城

帝國公使館

(欄外註記)
「崔福述ハ邪敎ヲ布演シタリトテ斫殺セラル」