二一八 五月十八日

東學黨情報ノ件

公信第七四號 五月二十五日接受

東學黨ノ再燃

去月下旬ヨリ東學黨再ヒ忠淸道報恩木川等ノ地方ニ集合シ
テ民情不穩之カ爲メニ當政府ニモ頗フル心配シテ屢屢廟議
ヲ凝シ先般旣ニ魚允中ヲ都御史ニ命シ該地方ニ發遣シ且ツ
各地方官ノ在京者ニ飭令シテ歸任其管內ノ取締ヲ爲サシメ
ラレタル事ハ朝報ニ相見得候ニ付熟ト探偵致候處大凡左ノ
通リニ被推測候

一 忠淸道報恩木川及全羅道長城等ノ地方ニ多少ノ該黨集
合シタルニ相違ナキモ其目的ハ勢力ヲ集メテ上京セント
スル者カ若クハ先般捕盜廳ヨリ遣シタル捕吏又ハ地方官
吏ノ捕拿ヲ恐レ之ヲ避ケ且ツ之ヲ拒マンカ爲メニ集合シ
タルヤハ詳ナラス察スルニ後說實情ニ近キカ如シ彼等ハ
報恩ニテ壘ヲ築キ旗ヲ建テ保守ノ準備ヲ爲セリトノ風說
アレトモ是亦不詳

一 魚允中ヨリ初發ノ電報ニテ彼等ハ說諭ニ服シ解散シタ
ル旨ヲ通シ尋テ又其然ラサル旨ヲ通報シタリトノ說アリ
韓民等昨今猶ホ危懼ヲ懷ク模樣アルニ依テ觀ルニ蓋シ未
タ解散ニ至ラサルヘシ又數日前ヨリ內內兵隊ヲ送リ旣ニ
數百名ハ水原迄進ミ水原ヨリ二三百名忠淸道ニ向テ進行
中ナリトノ說アリ派兵鎭定ノ儀ニ付テハ過日袁世凱氏ノ
忠告アリシ趣ナレハ實說ナルヘシ

一 京城人民ハ危懼ヲ懷キ中ニハ難ヲ城外ニ避ケントスル
者アルハ實說ナリ是ハ獨リ東學黨ニ源因シタル者ニアラ
ス其他外交上ノ形勢ニ付キ內內警戒スル者モアルヘシ隨
テ我居留地ノ商況ニ著キ影響ヲ及セリ但シ在留本邦人ハ
更ニ動搖ノ模樣ナシ

右ハ東學黨再燃ニ關スル數日來ノ景況ニ有之候尙ホ形勢切
迫ノ樣子モ有之候ハヽ先般ノ例ニ倣ヒ探偵人ヲ派シ其事實
ヲ慥メ防避ノ準備相立可申ト存候
右具報旁申進候也

明治二十六年五月十八日 在京城

領事 杉村濬(印)

外務次官 林董殿