廿七年六月廿一日接受 主管 政務局[手決][印]
大臣[印]
次官[印]
機密受第▣▣三一號

機密第二十三號

日本兵入京前後ニ於ル大院君ノ言行ニ付具報

夙トニ剛毅英邁ノ聞アリ當國第一流ノ人傑トシテ中外人ノ爲メニ最
モ畏敬セラルヽ現國王陛下ノ御生父タル大院君ハ現政府ノ執權者タル
閔族ノ爲メ殆ト出閉モ仝樣ナル待遇ヲ受ケ居常鬱鬱トシテ該族ノ
失政ヲ憤フラレ何時カ機ヲ乘シテ其權力ヲ奪ヒ以テ國政ノ改良ニ着
手セラレントスル念慮ヲ有之候趣ニ御座候處今回東學黨事件ニ
關シテハ仝君ヲ於テ如何ナル意見ヲ有セラルヽ哉又タ當地ニ於テ早
晩東學黨ニ內應スル者モ可有之候トカ聞及候ニ付其內情ヲ探偵
スル爲メ本月三日平素仝君ノ▣眷顧ヲ受ケ屢屢其邸內ニ支
スル當館附渡邊巡査ニ命シ仝君ニ面謁ヒシメタルニ語次東
學黨ノ事ニ及ヒタル時本日附機密第二十二號ニ臨時セル別紙
ノ通リ談話有之候趣ニ御座候尙又タ仝君ノ近狀特ニ今回日 本兵入京ノ件ニ付仝君ニハ如何樣ノ感覺ヲ有セラルヽ哉ヲ試ミル爲メ
仝巡査ヲシテ去ル九日更ラニ仝君ノ邸ニ伺候セシメ候處其節別
紙ノ通リ談話有之候間爲御參考右及進達候尙又タ聞ク所
ニヨレハ國王陛下ニハ國事御諮詢ノ爲メ數日以前ヨリ頻リニ
敎使ヲ以テ仝君ノ入闕ヲ命セラレラタレトモ仝君ニハ閔族ノ嫌疑ヲ
避クル爲メ因テ之ヲ辭セラレタル由ナルカ一昨日ハ强テトノ王命アリタル
趣ニテ終ニ入闕セラレタル由ニ御座候然ルニ仝君ニシテ若シ此際ラ臨
ミ首尾ヨク政權ヲ其手ニ收メラルヽ事ニモ相成候ハヽタトヒ政府
部內ニハ一時混雜ヲ見ルヘキモ當國國政ノ改良ハ左迠困難ヲ見
スニテ行ハルヘキ義ト存候

右及具報候敬具

明治廿七年六月十三日 駐京城
二等領事內田定槌[印] 外務次官林董殿

渡邊巡査口頭復命筆記

六月九日大院君ヲ訪ヒ露國出兵ノ實否ヲ問ヒタル
ニ其事ニ付テハ段段探偵シタルモ政府ニ公然ノ照會
等ヲナシタルニアラス思フニ閔氏ノ一族中ニテ露國ニ
出兵ヲ依賴シタルモノナラント同君ニ於テ答ラレタレハ
左樣ノコトハ可笑事ニ似タリ何トナレハ一方ニ淸兵ヲ
請ヒ一方ハ露國ノ出兵ヲ求ムル等ハ事實ニ於テアル
マシキコトナリト考ラル如何ト再問ヲ試ミタレハ同君ハ
冷笑シテ曰ク閔氏ハ総テ一致ノ運動ヲナモノト思
フカ一方ニ淸兵ヲ請ハヽ一方ハ露國ニ求ムルハ當然
ノコトナリ各己レノ結フ所ニヨリテ事ヲ爲サンスルハ目下ノ
狀況ナリ閔族中ニモ露國ニ北境ヲ與ヘント約束シタル
等ノ事實アルニアラスヤ故ニ必スシモ露國ニ出兵ノ要 求ヲナシタルコトナシト云フヘカラス云云

東徒ノ近狀ノ如何ヲ問ヒシニ詳細ノ近狀ハ承知セサ
レトモ首魁二名ハ已ニ死ニツキ全州ハ恢復ニ至リタリ
トノ話ハ聞及ヘリト答ラレタリ

大院君ハ問フニ大鳥公使着京ノ日時ヲ以テセリ依テ
不日到着セラルヽナラント答ヒタレハ大鳥公使ハ李中
堂トハ懇意ノ由ニアラスヤト問ハレタリ依テ淸國ニモ
公使トシテ永々在任ナリシカバ隨分懇意ニセラレタル
ニ相違ナカルヘシ近日公使モ着任ニモナラハ大鳥公使ト
モ御相談ノ上閔氏ノ惡政ヲ改革ナサレテハ如何トノ
話シニ及ヒタレハ同君ハ答テ曰ク大鳥公使ト李中堂
カ若シ相談ノ上我國政事上ノ改革ヲナサントスル如
キコトアリトスルモ余ハ夫等ノ事ニハ與ラス自分ハ十二三 年モ世事ニ關係ヲ絶チ居ル故先ツ見物スル位ノモノ
ナリ云云

近日日本兵ハ民留民保護ノ爲ニ來ル由若シ來ルコト
ニナラバ淸兵等トモ衝突ナキヲ保シ難シ一朝事ノ起ル
ニ至テハ容易ノ事ニアラス依テ其未タ來ラサルニ當リ
大人先ツ大闕ニ入リ総テ外兵ノ上陸ヲナサシメヌ樣
ニ御取計相成テハ如何ト話シタレハ同君曰ク自分ノ言フ
コトハ一モ容レラレズ反テ種種ノ疑ヲ招ク丈ナリ此等
ノコトニ就テハ自分ハ大闕ニ入ルコトハ勿論若シ來
談アルモ相談ニハ與ラサル積ナリ云云