廿七年十月一日接受 主管 政務局[印]
[印]
大臣[手決]

機密第六十號 通商局長[印]

慶尙道民亂再發及鎭撫方ノ件

去ル廿五日電報ヲ以テ申進候通リ慶尙道
北部ニ於テハ東學黨各所ニ集マリ不穩ノ
擧動アル趣ニ有之候今其詳報ヲ聞クニ

一聞慶ヨリ五里乃至廿四五里隔リタル葛平
赤城淸風龍宮醴泉及ヒ草谷等ニ多數
ノ東學黨集マリ而シテ報恩ハ其巢窟タ
リ該處等ノ地方官ハ日日凶徒ヲ捕縛シ鎭
撫ニ力ヲ盡スモ其效ヲ奏スル能ハズ凶徒ハ
我兵站部ヲ襲ハントスルノ右樣アリ(聞慶
兵站官ヨリノ九月二十四日付報告)

一東學黨五十餘名竊ニ大邱ヘ入リ込ミタリ嚴 重搜索中ナルモ人口多クシテ甚困難ナリ右五
十餘名ハ先着者ニシテ尙追追多數ノ同黨入
リ込ミ來ルノ模樣アリ(大邱兵站部ヨリ九月
二十四日付報告)

一東學黨三千人計リ安東地方ニ集リ在台封
我兵站部ヲ襲ハントストノ報知ニ接シ同部
司令官ハ副官竹內大尉ヲシテ偵察ノ爲メ出張
シメタルニ大尉ハ龍宮ニ於テ多數ノ同黨ニ所囲
マレ襟元ニ重傷ヲ負フテ仆レタリ從卒三名
辛フシテ台封兵站部ヘ逃ゲ歸レリ尋テ
大尉ノ死體ヲ發見シ兵站部ヘ引取レリ(九月
二十二日同三日同四日ニ付台封兵站部ヨリノ報告)
又別報ニヨレハ安東ニ集合セルモノハ東學黨 ニアラズシテ自ラ義兵ト唱フル由其巨魁ハ徐
某ニシテ曾テ京城ニテ高官ヲ奉シタリト云フ
其主唱スル處ハ支那ト朝鮮トハ數百年
來離ルベカラサルノ關係アリ日本ガ今日
我邦ヲ犯スハ不法ナルニ付之ヲ打拂フベシ
トノ事ニテ各處ニ檄文ヲ廻ハシ同志ヲ集メ
タリト云フ

一晉州ニモ一揆起リ釜山ヘ▣ヒ來ラントスルノ
模樣アリト云フ又蔚山彦陽ニモ民亂起リ
シカコレハ間モナク解散セリトノ事ナリ

此ノ如ク不穩ノ勢追追高マリ地方官ニ於テ
ハ鎭壓ノ實力ヨリ始メ少官ハ當港監理ヲ▣▣
慶尙道監司ヘ民亂鎭撫方照會ニ及ヒ候得共 監司ハ之ニ對シ單ニ校卒ヲ派遣シタルノミニテ到
底鎭撫ノ目的ヲ達スル能ハズ依テ當港兵站
監ヨリハ已ムヲ得ズ聞慶台封等ノ同部ニ進
擊ノ命ヲ傳ヘ尙當地ヨリモ一小隊ヲ派遣致候右
兵站部ガ前後ノ手段ヲ取ルニ至リタルハ實ニ一日
モ猶豫シ難キ危急ノ場合ナルニ基キタル次第ニ
有之候尙又朝鮮政府ヨリモ慶尙監司ニ電令
シテ兵士ヲ出シ共ニ鎭撫ニ盡力セシムル樣照會方
大鳥公使ヘ稟請及置候然ル處今朝接手京電
ノ趣ニヨレハ愈朝鮮政府ニ於テモ慶尙監司ヘ
電令シ兵卒三百人ヲ民亂地ヘ派出セシムル事ニ
相成候トノ事ニ有之候右不取敢及報申候
也

明治二十七年九月廿七日
在釜山
總領事室田義文[印]
外務大臣子爵陸奧宗光殿

追而本信發送ニ際シ在大邱兵站
司令官馬屋原少佐ヨリ兵站監ヘ來
報ニ大邱監司ハ京城ヨリ出兵ノ命
令ヲ受ケタルモ同地ニハ三百ノ兵士ナク
爲メニ出張セシムベキ途無之云云ト同
官迠申出テタル由ニ有之候