4月28日 ○放擲主義 朝鮮は萬事に就き、放任主義の國といはんよりは 勢斯の如くなれば、朝鮮に於て未た新事業の見る 是れ獨り韓國のみ然るにあらず、弱邦人が强國 ○韓人單純なり
韓人は比較的に正直といはんよりは、寧ろ單純と 證文に期を約するは是れ假相、一寸延れば尋と ○兵丁
潑皮無賴の徒を集め、賃銀を給し黑色の木綿服を 兵士の鐵砲忽ち化して酒資となる、朝鮮兵を擒
朝鮮雜記
寧ろ抛擲主義の國なりといふべし、其間唯古來の
習慣否、積弊を墨守するもの、稍其國是に似たる
あるのみ、故に殖産興業の如き財源の依て以て生
し、國家の依て以て存在する所以のものも、一に
之を抛擲して蒙昧なる民庶に委し去り、悠然とし
て國家の存亡を度外に置き、敢て意に介せざるも
のゝ如きは甚た憐むへきなり、
べきなきは固より其數也、新貨鑄造の如き、大三
輪の才識猶ほ足らさる所ありと雖も、毫も其手腕
を伸ばすこと能はざりしは、積弊の致す所にして
深く怪しむに足らさるなり、されば我邦人赤誠義
俠の心を以て、彼に萬國の狀勢を悟らしめ、新鮮
の空氣を呼吸せしめ、偏に新事業を興すの勇氣を
生せしめんと務むるあるも、根本的に彼の邦を革
新したるの後にあらずは、千畫萬圖、空しく泡沫
とならんのみ、例令ば我邦人彼の愚昧なるを憐み
新聞を發刊し學校を設立し、淳淳として彼を文化
に導かんとするも、其說く所、其授くる所、立國
の本源、立身の本體、事苟も孔孟以外に馳せ、若
しくは朝鮮積弊の基點を指摘するか如きことあれ
ば、韓廷は必ず令を發し法を設け、新聞を閱讀す
るを禁じ、校舍に出入するを罰するに至るは、勢
の睹易き所なりとす、否寧ろ學校を設立せんとし
新聞を發刊せんとするに先ち、浮說百出、日本人
は學校、新聞、を資として如何なる奸策を行はん
も知るべからず、由由敷國家の大事は、必す玆に
胚胎せんなどゝ、他人の赤誠より湧き出てし恩惠
的事業を敵視して、そを破壞せんと欲するも亦甚
た睹易き所なりとす、鳴
唇亡びて齒寒し、斯る愚邦と境を接し、壤を交ゆ
る邦國の不幸、亦大ならずや、
人の事業に對する感情、常に此の如し、蓋し疑
心自から暗鬼を描き出すのみ、可憫可憫
いふべき人種なり、彼等の喜怒哀樂は頗る現金的
なり、彼等は人の面前を裝ひ或は飾るなどいふ陰
險の部に屬すべき性質の寡き人間なり、故に彼等
は眼前に於ては、恩にも服し又威にも服す、然れ
ども暫くすれば忽ち忘れて知らざるものゝ如し、
是れ彼等は心服するといふことなきを以てなり、
人若し彼等をして心服せしめんものと、力を盡す
も效果を得ること甚だ稀なり、威を加ふる屢なれ
ば則ち怨み、恩を施す屢なれば則ち狎る、甚だ御
し惡き人種といふべし、例令ば彼等の金を借るや、
其証書面には若し期日を經過するも義務を果さゞ
るときは、違約金として五貫文を推尋すること、
或は官に卞呈して公裁を仰ぐべしなど、汪洋に書
くとも、瓜期に至りて人之を催促すれば、彼等は
卽ち曰く一錢もなし、願くは猶ほ一期を猶豫せよ
と、人其最初の約に違ふを責むれば、彼等卽ち曰
く唯一時の急を救はん爲めに然か書せるなり、當
時旣に必ず約を履むの意なかりしなりと、彼等は
常に斯る辯疏をなして恬として羞ぢることなし、
然れども彼等は不思議にも借りたる金を借りぬと
は言はぬなり、彼等實に單純なる人種なりといふ
べし、
いふ是れ韓人の眞面目、
着せしめ、號して兵丁といふ、彼等無賴の徒は賃銀
を貪らんが爲に兵丁となる、兵丁は元來彼國上下
人士の鄙む所なり、固より干城の慨ありて國家を
護るの志あるものにあらざるなり、黑色の木綿服
を着て鐵砲肩にせば、俸給を得るが故に兵丁とな
りたり、若し戰爭起らば鐵砲を棄てゝ常服を着く
るときは、敵兵に害せらるゝ虞なしとは、彼等兵
士の常に揚言する所なり、されば彼等は平生酒食
と賭博とに耽りて、其資に窮するときは其鐵砲を
典物となす如きは少しも怪しまず、故を以て政府
其俸給を與へざるときは、彼等黨をなして富者を
恐赫し豪家に掠奪す、京城內冬期盜賊多きは、政
府が冬期の俸給を兵士に拂はざるも一の原因なり
昨冬政府京城內に令して夜行を禁ず、曰く盜賊多
し夜行をなすなかれと、蓋し兵丁に給するに約束
の賃銀を以てするときは、政府此令を發するを要
せざるなり、嗚呼朝鮮の時事知るべきのみ、
にせんと欲さば宜く酒を以てすべし、