5月2日 ○題柱
彼の邦の俗、其家の門及ひ柱には必す、 ○字房
我邦にては何何屋といふを、彼國にては何何房と 我邦の下宿屋近頃必ず何何館と呼稱す、而し書 ○長者に對する禮式
彼の邦の如く、種族階級の正しき國に在りては、 韓人自ら稱して禮義の國といふ、蓋し虛禮は之 ○穢多
獸を屠りて其皮を取扱ふ所のものは、人間外の人 ○疾病者
夏時野外を逍遙すれば、處處に蓆を以て周壁とな 死屍を野外に曝す人俗當に此事あるべし
○狗 彼の邦俗好んて狗肉を喰ふ、家家之を蓄ふものは 彼の邦の狗は人糞を食て生命を繫き居るなり、故 獨り狗のみに非す、洋服和服を着けたる人を見 狗子を衛生局長と爲す妙
朝鮮雜記
堯乾坤。舜日月。
箕子故園。大明乾坤。
門迎春夏秋冬福。戶納東西南北財。
近水樓臺先得月。向陽花木易成春。
借問酒家何處在。牧童遙指杏花村。
等の詩句を書し置くなり、
いふ、笠房、銀房、眼鏡房の類皆然り、又學校を
稱して字房といふ、文字を發賣するといふ義か、
庫も亦圖書館といふ、蓋し書籍を宿せしむると
いふ義か、
言語行動も自ら階級の存するは、爭ふべからさる
事實にして、之を例せば「來れ」といふ言葉にも、
イロラ……………………小兒若くは下賤に對しむ、
イリ、オナラ…………小兒若くは目下に對して、
イリ、オシヨ…………同輩のものに對して、
イリ、シプシヨ………高貴の人に對して、
の如く種種の用方あるなり、假令三十に至りても
笠を戴かさるものは、他の十二三にして笠を戴き
たるものより、僮と呼はれて傲慢不遜の待遇を
受け、僮は常に笠を戴きたる者の前にて、煙草を
喫することを得す、笠を戴きたるものと雖も、高
貴の人に對しては其前にて煙草を喫すること能は
ず、而して凡へて高貴の人に對するには笠を戴か
さるを得ず、又坐を命せられざるときは坐して語
るを得ず、且つ道路とて名を知らぬ兩斑の步する
に逢ふも、口にしつゝある煙管を後に匿して其過
き去るを俟たざるべからず、去れば他邦の旅客と
いへとも、一目して其兩斑なると常漢なるとの區
別を知る、
れあり實體の乏しきは如何、
間として一般人民より度外視せられ、同等の交際
をなすこと能はず、恰も是れ我邦封建時代に於け
る穢多なり、
したる、半間四方の小屋に藁を布きて、瘦せ衰
たる人物のさも苦しげに打ち臥すを見ん、是れ乞
丐にあらずして疫病に惱む人なり、彼の邦にては
疫を死病と唱へ、其癒えたるものを僥倖とす、故
に此病に罹るものあれば、家族に傳染せんことを
患ひ、野外の小屋へ移し去るなり、勿論藥餌を與
ふることもなければ、大槪は捨て殺ろしと知るへ
し、嗚呼無情無情、
必ずしも戶を守り盜を警しめんが爲にあらず、多
くは其肉を喰はん爲のみ、一頭の賣價我邦の通貨
三四十錢なり、されば珍客吉事あるにあらざれば
叨りに屠らず、恰も我邦人の雞豚に於けるか如し
桀狗堯に吠ゆる豈狗の罪ならんや、狗の吠ゆるは
其性之を然らしむるのみ、彼の邦の狗は洋服和服
等、苟も韓服と異なるものを服するを見るときは
必す吠ゆ、余內地に於て其難に逢ひたること幾度
といふを知らず、一犬實を吠て萬犬虛を傳へ、狺狺
の聲は耳をして聾せしむるかを疑ふ、是れ亦蜀犬
月に吠ゆるの類か、
に其不潔いふばかりなし、乳兒室內に放糞すれば
狗を呼んて之を舐り去らしむ、復た敢て洗滌もせ
ざるなり、彼の邦人の不潔想ふへし、韓人犬を呼
ふに「ワアリワアリ」といふ、
れは牛馬も驚く、