5月19日 ○不正なる課稅
海關稅を拂ふて輸出入せし物品に、再び內地にて 米一俵 若し之を給せざれば、壓制にも其荷物を沒收し、 ○天災
早 ○氣樂
我邦の大工ならば半日も費さで出來得可き仕事も 要するに彼邦人は非常に煙草ずきなる動物にして
朝鮮雜記 (續)
稅金を課する譯は無き筈なるに、實際我邦商人は
斯の不當の稅を徵せられつゝある也、二三年前ま
では處ぐに徵稅所ありて、內地商業者の爲めに少
からざる妨礙を與へたりしが、今は京畿道にては、
金川郡助浦、慶尙道にては梁山郡浣洞のみと定ま
りたるよし、集稅官は每月二貫五百文を政府に上
納する約束にて徵稅所を受負ひ、他の收入は自家
の得分となす、今其課稅は左のし
小麥一俵
大豆一俵
唐木
大麥一俵 三十文
牛皮一負 三十文
或は其船舶を取上ぐる等、惡逆無道到らざる所な
し、我邦人其課稅の日韓條約に違背するを詰れば、
則ち曰く、余は我政府の命を受けて徵稅する也、
徵稅すれば止むのみ、若し之を不當不法となさば
去つて之を政府に問へ、余の關する所にあらずと、
我れ敢て之に從はず斷乎として其言に應せざる時
は、吾が荷物の賣買主を物色し代つて之を拂はし
む、故に其荷物を賣買せしものは鮮なからざる迷
惑を蒙るを以て、稅金を拂はざる日本人とは賣買
せざるを常とす、されば廣く內地の商業を營むも
のは、其顧客を失はんことを恐れ、澁顔して之を
支拂ふなり、我が領事は是等の事實を知らざるに
非ず、知つて默默たるは、好んで我が國權を蹂躪
せしむるものなり、この事實小と雖も亦我政府の
微弱を知るに足る
高山の頂上に登り、草木を焚き天に祈る、若し天
災猶止まずんは、縣、郡、府、牧の長官犧牲を供
へて神に禱る、犧牲には多く豚若しくは羊肉を用
ふ、又疫病流行する時の如きは盛なる儀式を設け
大に犧牲を捧ぐ
彼の邦の大工は三四日を費すを常とす、交通も頻
繁ならず、生存も困難ならざる彼邦の現態に對視
せば、敢て深く咎む可きにあらされとも、吾人の
目より見る時は其作業の氣樂なる、腹立たしくも
呆るゝこと多きも無理ならずといふ可し
三尺もある煙管をば行住座臥、作止語默の間にも
放つことなく、田を耕するにも物を運ぶにも、必
ず之を口にするは彼邦人一般の習慣とす、特に笑
ふ可きは我居留地へ沐浴に來るさへ、湯の中にて
煙草を喫し居る事是也、氣樂も亦沙汰の限りとい
ふ可き也、彼邦に永滯せし韓人具然禱なるもの、
曾つて予に語つて曰く、我邦人民が長き煙管を持
て、道行きなから煙草をふかし居る內は、國運再
興は到底望みなしと、是れ尤の言なり、思ふに長
き煙管を愛する國民に進取の氣性なきは古今萬國
同一揆なりとす