6月13日 ○彼の邦にては驛次の路傍に植ゆるに多く楊樹を ○彼の邦には猿猴無し、香具師猿猴を携へて八道 ○洛東江に沿ひ密陽府に達するの途上。一關あり ○慶尙、全羅、忠淸、京畿四道の旅舍にては、客 ○京城の大道を往還するに、日本公使は通常の輿 ○韓人王居光化門の敷石を指し、余に告けて曰く ○內地に旅して大邱を過く、兵士來り余に問ふて ○我邦內地より對州を經て、全羅慶尙兩道の海岸 ○彼の邦にては上流人士にあらざれは、靴を穿た ○京城の兩班富めるものは、洋燈或は西洋蠟燭を ○八道到る處の高山の巓には燧火臺あり、若し
朝鮮雜記 (續)
以てし、我邦にては多く松樹を以てす、松樹矗矗
として天に朝するもの龍蛇の如く、楊樹の楚楚と
して、媚を獻するもの婦女に似たり、是れ亦彼我
氣習の異なる所。
を周遊せしもの、大に利潤を得たりといふ。
題して鵲院關といふ、曾て佛國政府と隙を開きし
時に、之を建てたりといふ、關前に一酒店あり、
酒肴必ず鱸魚を用ゐ、酒味亦佳なり、行人必ず一
盞を傾く。
に供するに多く豆飯を以てす、他の四道にては粟
飯を以てす。
に乘りて、僅に巡査一名を隨ふのみなり、支那欽
差は馬上ゆたかに鞍に跨り、前驅後衛の騎士十數
人を隨ふ、韓人評して曰く日本は支那よりも小國
なり、貧國なり、弱國なりと。
貴邦亦斯の如き大石あるかと、韓人の固陋笑ふべ
し、余爲に呆然たりき。
曰 く、若し火藥を有せは分與せよと、因て想ふ
大邱の兵營兵士六百人、銃器之にかなふ、然れと
も彼等或は彈藥を有せざるなり。
に、物品を密輸出すれば、大に利益ありといふ、
其物品は石油、金巾、甲斐絹、傘、石鹼、洋燈、鏡、筆、
墨、紙、陶器、鍋釜類、其他雜貨一切。
ず、大槪は草鞋を穿てり。
使用すれとも、槪しては手ランブ若しくは牛豚の
脂を焚て明を取るなり、故に室內くすぶりて頗る
健康を害す。
一朝事あるの日には、火を焚て警を報する也と。