6月6日
朝鮮の擾亂 (續報)

反旗一たび飜べりて東徒の銳鋒殆ど向ふ所敵無
きか如く旣に全羅道の境を越て忠淸道に入り軍
勢大に振ふて將に長驅京城を衝かんとするもの
に似たり韓廷の危急は言ふに及ばず今や其波動
は東洋諸國に及びて事態頗る輕からざるに至れ
り我社は此戰亂の眞相を確知するを以て何より
の急務と爲し世人が尙ほ冷冷淡淡對岸の火災視
するに當りて早く旣に戰地探訪者を特派したる
は▣に人の知る所なり探訪者は遲くも三四日中
には釜山に着し直に戰地に入込む筈なれば實地 目擊の確報の達せんこと近きに在りと知る可し
尙ほ今後の風雲次第によりては別に探訪者を京
城に遣はし韓廷の摸樣及び居留邦人等の安否を
視察せしむることある可し

特派員の通信の達する迄は暫らく虛實の如何を
問はず朝鮮通信の儘を揭げて擾亂の一斑を知る
の資に供す

◎戰亂地より韓廷に達せし電報

只今靈光府伯の報する所によれば一昨十二日彼
徒萬餘名城內に闖入し居民を劫散す鎭定の策な
し惶怖に堪えず(舊四月十四日辰刻全州監司發)

軍糧運搬の方法豫め講せすんばあるべからず依
て益山府伯鄭元成をして此任に當らしめんこと
を請ふ又曰く彼徒靈光に闖入せしと云ふ

(仝十五日招討使發)

賊情を探偵するに殆んど三千の多きに至る又懷
德縣に於て銃一、鎗十六、彈丸七十三、弓一張を
掠奪せらるに付屬吏に命し取返しの法を謀る

(仝日錦山縣監發)

至急軍糧米輸送せずんばあるべからず漢陽敬濟
內のいつれか一隻今日群山に向つて回漕せよ返
電を俁つ (仝十六日運糧官鄭元成發)

江華の海軍何日到着するや軍刀拾柄と上等の雷
鑵送附せよ斥候元世祿行衙判明し招還せり李斗
黃、李學承をして二隊の兵を率ゐ金溝、泰仁、井
邑、高敞、興德の地方に向はしむ(仝日招討使發)

彼徒の動靜を探偵するに一は靈光に留在し一は
咸平に向はんとす而して京軍程を急き彼の住處
に赴かしめ將に開戰せしめんとす今曉取敢へず
二隊の兵を送る又曰招討使京軍二隊の兵を率て
先刻彼徒の屯處に赴けり(仝十七日全州監司發)

彼徒半は靈光に留り半は咸平務安地方に向ふ昨
日二隊の兵を送り今曉再ひ二隊の兵を送りて後
援せしむ (仝日招討使發)

東徒入つて靈光を犯し城中に據る則ち招討使は
急に兵を率ゐて靈光にむかふ

(仝十七日全州監司發)

轉運使火輪船に乘し稅穀を載せて下往する處へ
東徒來りて捉へ去る依て之を取り返す爲め早速
屬吏を急派せり (仝十八日全州監司發)

◎東學黨の告文 東學黨の告文なりと傳ふるも の長短二三種あり左に揭ぐるもの亦其一なり

今於世最貴者、以其人倫也。君子父子人倫之大者
君仁臣直。父慈子孝。然後。乃成家國能逮無疆之
福。今我聖上仁孝慈愛。神明聖叡。賢良正直之臣。
翼贊佐明。堯舜之化。文景之記。可指日而希矣。今
之爲臣。不思報國。徒竊祿位。掩蔽聰明。何意。諂
容忠諫之士。謂之妖言。正直之人。謂之匪徒。內無
輔國之才。外多虐民之官。人民之心。日益流變。入
無樂生之業。出無保軀之策。虐政日肆。怨聲相屬。
君臣之家。父子之倫。上下之分。遂壞而無遺矣。管
子曰。四維不張。國乃滅亡。方今之勢。有甚於古者
矣。自公卿以下方伯守令。不念國家之危殆。徒切
肥己潤家之計。銓選之門。視作生貨之路。應試之
場。擧作交易之市。許多貨賂。不納王庫。反充私藏
國有積累之債。不念圖報。驂侈淫昵。無所畏忌。八
路魚肉。萬民塗炭。守之貪虐。良有以也。奈之何。
民不窮且困也。民爲國本。本削則國殘。不念輔國
安民之方策。外設鄕第。惟謀獨念之方。徒竊祿位。
豈其理哉。吾徒雖學野遺民。食君土。服君衣。不可
坐視國家之危。而八路同心。億兆詢議。今擧義。旋
以輔國安民。爲死生之誓。今日之光景。雖屬驚駭
切勿恐。內各安其業。共視昇平。日月成休。聖化千
萬。幸甚