12月8日
支那をして無政府
たらしむること勿れ
相當と認むべき條件の下に、媾和條約を訂結する
ことを得れば格別、若し到底望みなきに於ては、我
は當に如何か支那に對すべき、愛親覺羅氏を亡ぼ
し、以て四百州を永久に占領すべきか、抑も支那
人中に於ける有力なる新人物を喚起して、之に新
政府を創設せしめ、我は唯だ之を保護するに止む
べきか、是れ實に吾人の豫め講究すべき緊要問題
なりとす。
我輩は成るべく相當なる媾和條約の下に、愛親覺
羅氏の祀の絶たざらむことを望む、何となれば愛親
覺羅氏の存立するは、多少統一の政を施くに便宜
あるべければ也、然りと雖到底媾和の望みなきに
於ては、我輩は斷じて支那の全土を屠つて我が屬
國と爲さむことを欲す、蓋し支那人中に就て、聲望
力量兼ね具はる所の俊傑を得て、之に新政府の創
設を委ねんことは、到底今日に於て望み得がたき
所なれば也。
唯だ我輩の恐るゝ所は、退いては媾和を全うする
ことを得ず、進んでは支那全土奄有の大策を立つる
を得ず、遂に支那をして茫漠たる無政府の境遇に
立たしめ、內地の亂民四方に起り、列國の干涉機
に投じて入り來り、爲に永く東洋の平和を擾亂し
て已まざるに至らむこと是なり、我輩は此點に於て
我政府が特に操縱を巧みにせむことを望むもの也。