1月25日
●東徒討伐の狀況

去月三十日當釜山全羅道南部へ派遣したる第四
中隊長鈴木大尉より別紙の報告昨夜到達したり
別紙の報告は去る八日順天府を發したるものな
り

明治廿八年一月十四日釜山にて
兵站兼碇舶場司令官今橋少佐
川上兵站總監殿

(一)明治廿七年十二月卅日釜山兵站地を出發し金海
景原鎭海より三邑谷に至る報告すべき件なし

(二)一月三日昆陽に着し爰に始めて東徒の情況を知
るを得たり曰く東徒凡そ七百名蟾湖江の右岸河東
府の正西に屯集し今や河東府に侵入せんとするの
狀あり且つ同江の上流は求禮縣に下流は同江口高
浦に至る間▣數多の東徒散在せり河東府は韓兵約
一千名を駐在せしめ其防禦の策を講じ我軍の至る
を鶴首して待てりと云ふ

(二)同四日午後河東府に着し府使及其他の人に就き
親しく同地の情況を質せしに彼れ曰く凡廿日以
前より韓兵約四百名當府に屯集し東徒の來襲を防
ぎつゝありしも未だ一戰を爲さず然りと雖ども進
んで攻擊するの勇氣なく荏苒經過の折柄日本軍卽
ち貴隊の當府に向はるゝを聞き俄に勢を得て昨三
日蟾湖江を河東の上流四里に於て對岸に渡り今や
山を燒き民家を拂ひ同江口に向ひ該徒掃攘に着手
せりと

(四)同五日藤坂少尉の率ゐる一小隊には韓兵七十名
(我軍の出迎として河東府に來りし左水營兵)を附
し燮湖江右岸の敵を同江口高浦に向ひ擊退せしめ
他の二小隊は本官之を率ゐ蟾居驛に向ひたり然る
に抵抗すべき一漢なく午後同驛に着したり藤坂少
尉は高浦附近に於て二三の東徒に出會したりしも
彼れ逸早く遁逃せしを以て一彈をも發せず蟾居驛
に歸着せり途中の民家村落等は韓兵悉く之に放火
せり(放火の件に就ては該朝鮮韓兵長官に對して 嚴しく忠告し今後放火する者あらば斬罪に處すべ
しとの令を出さしむるに至れり)蟾居驛に着する
や韓兵は近村の人民を召集し一一之を糺問し左の
處刑を爲したり
一都接主 金以甲 斬首 一廿七名 砲殺
外數十名の捕縛者あるも罪の有無未だ明ならず

(五)同月六日韓兵と共に蟾居驛を發し光陽に向へり
其途襄陽居を過ぐる際該村民等は東徒第二の巨魁
都執綱丁洪を捕獲せりとて之を路上に擔へり然
るに打創刀創等を受け將に絶命に瀕し軍醫も施す
に衛なく依て韓法により斬首せしむ而して尙進ん
で光陽府に到れば彼れ東徒は先に我軍の向ふを聞
き已に韓曆七日を以て解散せりと而して府民は官
吏と協力し殘徒を捕へ左の處刑をなせり

一嶺湖大接主(金溝)金仁培 梟首
一同首接主(順天) 劉夏德 梟首
一沙谷接主 韓君夾 砲殺
一玉龍接主 徐允若兄弟 同
一仁德接主 朴治西 同
一沙谷接主 韓辰有 同
一光陽順天首接主 金鶴植 同
一鳳興接主 朴興西 同
一仁德主 成石河 同
一月浦接主 金明淑 同
一順天西面接主 金 哥 同
一牛造徒黨 李且兼 同
一順天西面 黃在淑 同
外七十八名砲殺

(六)七日左水營兵と共に光陽を發し順天に向ひしも
亦一澳の敵すべき者なく午後該府に到着せり當府
屯集の東徒も光陽の東徒と同日を以て解散し其大
部分は長興及び興陽地方に退却せし者の如し當府
民も亦官吏に協力し殘徒を捕へ左の處刑をなせり

一嶺湖都執綱雙岩面 鄭▣炯 一省察 權炳宅
右砲殺

一四面接主 金永九 一別良面接主 金永友
一月登面接主 南正日
右梟首

名不知者 打殺 九十四名 囚徒 數十名

(七)中隊は目下當地に滯在し專ら東徒の所在搜索中

(八)第十九大隊は未だ當地方に來らず其所在も亦分
明ならず

(九)糧食韓錢人夫等は都て好都合なり

(十)患者の景況は雇醫の報告あるを以て略す