6月6日
●朝鮮の形勢 は連日の紙上に報道したる所に
て旣に危急の場合に迫りたるを知るべし從來朝鮮
の變報は度度人を驚かしたれど龍頭蛇尾に終るが
常なりき今回こそはドウやら物に成りそうなと思
ひ吾社は最初より詳細の事情を報じて漏さゞらん
ことを力めけるが果して東學黨の勢ひ猛烈を極め
連戰官兵を破りて今は京城を距る十餘里の地に迫
れり而して淸廷より援兵を出だして之を鎭壓せん
とする場合となりければ吾政府にても手を束ねて
傍觀するを得ず一萬に近き居留人民保護のために
は夫夫準備せらるゝことなるべし右準備に就き聞
ける所なきにあらねど此際之を公にする能はず
今は唯朝鮮の形勢は容易ならぬ事情に立至りたり
と云ふを以て足れりとすべきのみ
●脫黨の朝鮮士族 東學黨の猛威を逞うするは
旣に隱れなき事實なるが曩に十五年の變亂に方り
閔族の誅を免れ咸鏡道に脫走せし千餘名の士族が
驚中に加はり居らずやとの說あり萬一斯かる事あ
りとせば此士族輩は軍事に精練なるもの多く刀劍
銃砲の使用に熟し居るものなれば▣▣敷き大事な
りとて閔族の心▣一方ならず目下其方面に細作を
派し居るよし流傳ありと一昨四日明石丸便にて京
城より當地の或方に達したる書信の端に見えぬ