8月29日
東學黨の歸順 忠淸道に於て東學黨再燃の兆あ
るより大院君は鄭敬源を抽んでゝ宣撫使と爲し尙
昨年中東徒の巨魁たりし徐丙學を獄より起して微
官を授け以て諭撫の媒介者たらしめんとし此一行
忠淸道に出發せんと用意旣に整ひたるに東徒の魁
首全鳳均は金成奎なる者を介して大院君に具申し
て曰く我黨が徒衆を集めて大に爲す所あらんとし
たるは畢竟弊政を正して生民を塗炭に拯ひ姦臣を
斥けて國太公を起さんとの志望に外ならず然るに
今や國太公旣に立ちて再び政權を執らるゝ上は吾
吾の希望は旣に達せりと云ふべく而して其施政の
方途は日本に詢りて行はるゝと否らざるとは吾吾
の問ふ所には非ず兎にも角にも今日に於ては吾吾
徒衆を集むるの要なきを以て速に解散すべし云云
と因て大院君は親ら書を裁して其義擧たるを賞し
大に慰諭する所ありて全く鎭定に歸したりければ
宣撫使も下向に及ばずして止みたりと云ふ以て八
道人民が國太公に對する仰慕心の深きを知るに足
るべし