6月7日
●朝鮮問題 朝鮮國內亂の餘波に生
ずる事項は其關する所容易ならざるを以て本社の
知る所亦悉く揭載するを得ず故に其差支なきも
のゝみを記す是亦國家の爲に謹むのみ讀者之を諒
せよ
◎陸軍大臣邸の會議 は去四日の十時より開か
れたり會する者は川上參謀長、三好監軍、兒玉次
官、野田經理局長等なりしと云ふ
◎兩師團への電報 陸軍大臣邸會議の結果、第
五第六師團に電報を發し又沖繩巡廻中の第六師
團長黑木爲楨氏へも電報を發したる由
◎首相邸の評議 陸海軍外務各大臣の交涉繁劇
なる事は東電の旣に報ずる所、之と同樣伊藤首相
の邸にも四日の朝ごろより二三大臣頻りに出入評
議する摸樣なりと
◎參內上奏 伊藤總理及び參謀總長有栖川宮殿
下は何れも一昨日參內上奏する所ありたる由
◎川上參謀次長 朝鮮問題に付き陸軍部內にて
最も主要の局に當る者は參謀次長川上操六氏なら
んとの事なり
◎宇品に集る十艘の滊船 は政府の借上げに屬
する運送船なりとの事なり
◎日淸の照會 我政府と天津なる李鴻章との間
には去四日頃より電信の往復頻繁なりと云ふ
◎電信線路 京城、釜山間の電信が不通となり
たるは久しき以前の事なり加ふるに東學黨は今や
全州を占領したるを以て同地の電信局も多分賊手
に落ちたるなるべし果して然らば仁川或は京城よ
り我國に向て電信を發せんには上海を迂回せざる
を得ざるべし
◎我軍艦 筑紫、大嶋、大和の三艦旣に仁川にあ
り而して赤城艦も亦仁川に向ひ八重山艦も亦大鳥
公使の一行を乘せて仁川に向へり此の如くにして
我が五艦朝鮮に集らんとす居留民たる者亦聊か安
んずべし
◎朝鮮公使 我國駐在の朝鮮公使金思徹氏は去
四日午前十時支那公使館を訪問し午後二時半に至
るも歸らず頗る密議に耽りたる摸樣なりしと是亦
朝鮮變亂に關する事ならんと傳ふ