6月28日 東學黨は日支兩國の出兵を聞き散じて各所に潛 我帝國の美風
外に一國の勢威を宣揚せんと欲せば必らず內に人 聞くが如くんば李鴻章は我國駐箚の汪公使より我 然れども我大日本帝國は自から彼等に異なり兄弟 廟堂固より算あり敢て優柔の手段を採りて國家の
●東學黨再び起らん
(
伏せしも機を伺ひ又又蜂起するの恐れありと云
心の一致無かる可らず、人心乖離黨與相擠して而
して對外の重事を決せんとす其策を失せざる稀れ
なり、朝鮮東學黨の變亂始めて起るや、淸國政府
は援兵を名として討賊の兵を朝鮮に出し以て私か
に多年の宿望を達せんと期し、其行文知照を我國
に發する或は暴慢不遜に涉るものありしが如く聞
くに拘らず、我兵の已に海を渡るや彼れ周章措く
處を知らず東徒漸く鎭靜すと稱して頻りに我兵の
入京を謝斷せんとし、今はまた東徒已に平定すと
稱して撤兵の事を我國に請求し、其請求の峻絶せ
らるゝを見てはまた自ら兵力に訴ふべぎの形狀を
表して以て或は威嚇的に彼れが所思を達せんとす
我國の方針は蓋し斷斷乎として奪ふ可らざるもの
あるが故に、彼れの暴慢無禮固より施すに處なか
る可しと雖も、抑も彼れをして斯かる、淺謀を用
えるに至らしめたるもの故なきにあらざるなり
政界の紛爭益す甚しく今日の勢によれば到底外
國と事端を啓くが如き餘勇なきを聞て頗る輕侮の
念を抱ける折柄、適ま朝鮮に東徒の內亂あるこそ
幸ひ此機失す可からずとなして袁世凱に囑し以て
今回の如き輕擧を爲すに至れりと、彼れ專制政治
下に安居せる淸國人の眼を以てすれば國に朋黨あ
りて政權を相爭ふは蓋し邦家の大患にして此時に
當りて海外に向つて手足を伸すが如きは固より望
む可らざる處ならん、獨り專制の淸國のみならず
或は他の立憲國に於ても內國の爭軋を以て之を外
事に及ぼすもの無きにあらず宜なるかな、彼れ李
鴻章の輩が我政界の形勢を側聞して漫然與みし易
しと速斷せんこと
內に䦧げども外侮りを禦ぐは我帝國臣民特得の美
風にして奪はんと欲して奪ふ可らず、彼等只之を
知らず妄りに他を類推し、或は其暴慢を逞うせ
んとす、心情寧ろ憐む可きのみ、蓋し今回の事の
如きは四千萬同胞の心を一にする處にして彼輩を
して一指も我れに加へしめざるの決心あることは
全國新聞の異口同音に稱道するを見て明かなり、
夫れ然り我國近時の政界は紛爭互奪の勢頗る盛
なるものありと雖も其海外に對して國名を辱しめ
ざるの一段に至りては人心內に一致する者にして
則ち以て國威を外に宣揚するに足るべきなり
大事を失するが如きことあらざるを信ずるも、國
民の意向は亦た大に當局の心を强うす、吾輩は言
を重ねて當局に望むと同時に國民に向つても亦た
其決心と表示すべきを勸告せんと欲す、蓋し今日
は大日本帝國の美風を發輝して彼輩の肝膽を寒か
らしむるの好機なるを信ずればなり