7月8日
韓廷の近狀

今や韓廷は實に危機一髮の間に存し日、淸の軍兵
は其境域に入り動もすれば事變を發生せんとす此
際の苦辛果して如何ぞや左に列擧するものは韓廷
の近狀を摘錄せしもの聊か以て其消息を知るに足
らん

國王の傳旨 韓曆五月十二日の朝報に韓王の傳
旨あり曰く

今番南服(全羅を云ふ)之致▣、不得已用武▣、念
軍卒之跨月展露、其辛苦可知、而就中勇敢效力之
最著者、自該營不次收用、其致斃者令本道設壇致
酹、將官與官人之遇害、無論臨陣與橫遭死於王事
一也、褒嘉贈秩之節、隨其事實而卽施之、凡軍興
所需京外措辨、詳探于該營該道、或會減或給代、
無或添弊、竝令廟堂條條商酌稟處

國王殿下は素より聖明の君主なり宜ろしく此傳旨
あるべきや必せり惜いかな大臣、宰相にして輔弼
の任を全うし得るものなきを

任、金二人の免職 全州監營の營將(卽ち司令
官なり)任泰斗及び中軍金達寬の兩人は過般東學
黨の爲め全州を奪取せられたるの咎に依り去十三
日(韓曆)其職を免ぜられ其後任としては營將に梁
弼煥、中軍に李承遠の兩人翌翌十五日任命せらる

金文鉉の押送 前全羅監司金文鉉は去十四日(
韓曆)禁府都事韓學洙其筋の命を蒙り巨濟府に押
送したり

招討使を召還す 五月十六日(韓曆)內務府は上
書して曰く

今見招討使▣▣、匪徒餘黨擧皆歸農、亦無可慮、
姑箕兵以鎭民心、伏竢處分云矣、目下急務惟在於
卽速班師、令民免有一日之煩費、亟圖撫恤安業之、
而騷餘民心亦不可不留鎭、泌營(江華兵營を云
ふ)兵房姑爲按住完府、招討使使之卽日撤回事

而して翌十七日內務府は再び上書して曰く

昨日湖南匪徒剿平之報、巡邊使旣撤回、今又見招
討使洪啓薰黨達、匪徒餘黨散歸、探知遠近亦無可
慮、京兵與泌兵(江華兵)可卽撤回、姑留監兵以鎭
民心、伏竢處分云矣、匪徒旣已掃除、其餘皆散去
歸農、目下急務惟在於卽速班師、令民免有一日之
煩費、亟圖撫恤安業之、而騷餘民心亦不可不留鎭、
沁營兵房姑爲按住完府、招討使使之卽日撤回事

此表に依り國王殿下は直に招討使を召還せしめら
るゝに至りしなりと云ふ

趙秉甲の押送 前古阜郡守趙秉甲は禁府に拘留
中なりしが去十七日(韓曆)訊杖三十回の後全羅道
唐津縣古今嶋▣置のことに決し同日該配所に押送
せられたり

還安式 ▣州に在る肇慶廟慶基殿は全州戰亂の
時威鳳山に▣奉せしが愈六月十六日(韓曆)を以て
還安の式を擧行すべき筈なりと云ふ

兪吉濬の出仕 前きに外務交涉衙門主事たりし 兪吉濬は久しく引退せしが去廿日(韓曆)再び出仕
して主事となりたる由

趙弼永の處刑 全羅道轉運御史たりし趙弼永は
職務上不都合の廉ありとて去二十日(韓曆)竄配の
典に處すべき旨傳旨ありたる由なり

閔泳雲告發せらる 全羅道高山縣監たる閔泳雲
は軍用の米穀千餘石金錢萬餘兩を費消したりとて
廉察使の告發する處となれり