媾和の條件
姑息的勅書は媾和の意を齎らし來れり、媾和と云ふと雖も、其條件は寧ろ京兵京官
の恥辱と稱するに足るべき者あり、當時朝鮮政府が國家統治の實力に缺乏せるこ
とは次の媾和條件に依りても槪ね之を知るべし
第一 東學人は尋常敎化なき民と異にして、頗る國家の爲めに用を爲すべき者
なり、故に一般民衆亦能く其意を體し、漫に之と爭端を開き、以て東學に對
する官の禮遇を傷くべからず、命に違ふ者は重罰あり
第二 東學人中、從來家を捨て産を擲ち、四方に出遊したる者極めて夥しかるべ
し、思ふに其家政亦之が爲めに紊亂して目下困難の狀に在る者、從つて少
なからざらん、是を以て一般民衆中、若し黨人に對して債權を有する者あ
らば、事情の如何を問ふを許さず、爾後宜く悉皆其債權を棄つべし、又田地
等を債權の典當に預り居る者は、總て其田地を本人に返還すべし
第三 東學人の四方に往來するを妨ぐべからず、舊怨ある者と雖も、決して他の
行動を阻害するを許さゞる也