淸將全州營に天佑俠を苦む
將に巁山縣に到らんとする途上、全州歸りの支那兵に逢ふ、俠徒の一人、身を挺して
之を斬殺せんとす、長者曰く孤弱者を殺戮するを止めよ、寧ろ之を要して何の爲め
に全州に赴きたるかを糾問せんと。乃ち進んで支那兵を四方より圍繞し、勵聲之
を詰つて曰く、汝何の爲めに全州に到りたる、實を以て聞せずんば白刃直に汝の頭
に臨まん。彼れ戰慄恐懼して曰く、小奴は上將に從つて全州に到りたる者なり。我
問ふて曰く、上將何の爲めに全州に至りたりや。彼答ふ、頃來日本人の全羅を騷が
す者あり、上將乃ち聶將軍の命を奉じて全州に入り、觀察使と共に計を設けて之を
捕獲せんと欲したるなりと。俠徒是に至つて始めて日前危險の眞相を解し得、愕
然自失する者瞬刻乃ち支那兵を放還し、又程を急いで忠淸路に走る