○東學黨の實力
東學黨の一派古阜の亂民に合同してより彼等の氣焰益益猖獗
に赴き先づ古皐
して一時先づ立脚の地盤を定め各處の貢米庫を毁て之を掠奪
し徒步の軍勢の外騎馬の一隊を修へ且つ又人數を繰り出すの
時に當りては之を二列に分ちて進ましめ時としては四列に作
り又分れて一列となすなど凜然として進行する有樣は之を朝
鮮の官兵に比するときは其勝るもの數等なりといふ此の如く
その進退操縱に略ほ洋式の訓鍊を眞似得て決して昨年初夏の
候に蜂起したるが如き輕擧烏合のものにあらず殊に東學黨と
し言へば表より不平不滿の徙を吸收する磁鐓の如きものなれ
ば虐政暴斂を厭ひつゝありたるの人民なれば先を爭て之に投
じ兵を擧てより以來雷同附加するもの日一日と其數を增し殆
ど八道を席捲せんとするの勢あるに至りたるは又た敢て怪む
に足らずかゝれば錢を愛するの文官死を惜むの武官焉ぞ能く
支ふるものならんや現に職を地方廳に奉ずる吏校捕將等の小
吏に至るまで款を東學黨に通ずるもの少なからず全羅忠淸兩
道の地方に長官たる府伯守令等より其統率せる部屬に至るま
で果して味方たるか將た又敵たるかは容易に判別に苦む所な
るべしといふ