○東學黨の兵器
東學黨の兵器として使用するところの物は只に掠奪のものゝ
みにあらずして銃砲に彈藥に其他種種の武具に至るまで先づ
▣▣の▣▣はありたるが如し蓋し去歲初夏の候に當り一度擾
亂を釀せしも砲銃彈藥等の用意なかりしため間もなく鎭壓さ
れたるに鑑み爾來陰かに其準備に怠りなかりしが一擧して多
くの銃砲を得ることを工夫し僅に一策を按出し各地方の頑民
共に吹聽し大に雉子を購入すべしと其價の如きは觸れ方格外
に高直なりしかば遠近の獵師共は大に喜び吾先きにと走せ集
まりたりければ賊徒は之を脅喝し或は之を勸誘し百方獵師共
を說き付け巧みに己れの黨中に引込みたるを以て當初事を擧
くるの際にありて已に二千餘挺の銃砲は準備しありたりとい
ふ其の上各地に於て掠奪せしものを合するときは四五千挺の
上にも超ゆべしと又賊徒が豫め今日あるを知りて準備し置き
たるもの惟り兵器のみに止まらず糧食金錢等を始め種種なる
軍用品等は何時の程にかその用意を整のへありすはと云ふ析
はいつにても蜂起せらるゝの仕度ありたりと且つそれのみな
らず今日彼等賊徒の進退驅引の自由自在にして能く節に合ひ
號令また能く黨中に行き渡り其擧動中中侮りがたきものある
を見るは或は今日まで隱密の間に於て戰陣の方を講し鍊兵を
もなし居りたるものなるやも知るべからずされば勇武の風地
を拂ひ遊隋
劍までも之を轉賣して一醉の快を貪るといふの有樣に陷りつ
ゝある韓兵に取りては誠に蔑り難き勁敵といふべきなり