○東學黨の民望
東學黨の內部には種種なる制規を設けありて苟も黨員たるも
のは必ず之に服從せざるべからざるの方法を立てありて頗る
能く規律の厲行をなし敢て犯すものなき有樣なるが中にも喫
煙を禁じ酒色に耽るを制するの條頃ありて苟も之に違ふもの
あれば嚴罰に處すべしとの一種の憲律あることなるが今回の
暴擧に就ては聊かも農民を害することをなさず其主旨とする
ところを問ふもの有るときは曰く內は政府の非政を改革し綿
纏たる情實を打ち破り外は居留の外人を追放し以て國民の福
利を圖るにありと而して其言ふところ常に實に現はれ先きに
古阜より全州に進行する折等には見物人群集し却て之を歡仰
するものゝ如くまた雜沓のため田圃の踏み荒るゝを見て農作
物を害することを戒しめ且つ如何なる雜品にても之を購ふと
きは必ず現金にて支拂ひなとするより地方民にとりては多少
の利益ともなり上に少しも危害のかゝる患なければ一般頑民
の間には頗る評判好しといふ