○追討軍の脫走
東學黨鎭壓のためとして洪啓薰の引率して群山に出張したる
彼の八百の親軍兵は最初其選に當りたるの當時何れも接戰す
るを厭ひ職を辭せんとせしものありしも假令戰地に向ふとも
決して戰を交へすとの約束を結びたる上强いて之を派出せし
めたるものなるよしにて群山に達してより以來只暴徒の樣子
を見ると稱して曠日彌久いたつらに各所に屯在するのみにし
てその間或は兵器の半を奪はれ或は過半の兵士の逃亡者を生
じ糧食相繼がず連日うす粥を食し居りたる有樣にて全く勇氣
なく少しも戰の意とてはなく間間勇氣あるものあるも官軍の
ために働くを欲せず寧ろ賊軍のために死力を出さんとするも
の少なからず中には進軍の令下ると同時に逃走し黑地の制服
を脫き白衣を着けて賊陣に雜はり銃劍を官軍にむくるものあ
るに至れりといふ