○全羅監司の賊狀具申
全羅監司金文鉉が營狡を四方に派して東學黨の情狀を探知し
之を韓廷に具申したりと云ふその要略を聞くに目下東派の各
處に屯集するもの大小合せて二十七所ありて其內大陣と稱す
るもの八ケ所小陣と稱するもの十九ケ所にして大なるは各各
數千名を有し小と雖も亦五六百を下らず各陣に大將あり每部
に隊長あり晝間は軍法を操鍊し夜間は經文の如きものを誦讀
す而して大將はつねに各隊長を誡めて曰く戰場に臨む時成る
べく人命を損傷すること勿れ殺さすして勝つものを首功とな
さん且つ邑里等を過ぐるとも決して秋毫も侵掠すべからず若
し此命に違うものあらば黨與中をば放逐すべしと彼等の總大
將は左大將は右大將はなりまた此等東學
黨が陣を敷くに當りては必ず白布の帳幕を以て前面を掩ふ彈
丸を防ぐためと云ふ目下彼黨の屯聚最も多きは茂長靈光の二
ケ所なれども常に出沒自在なるを以て容易に踪跡しかたし尙
ほ彼等の運動は頗る祕密を守るを以て黨外のものには容易に
知り難きものあり云云