○韓廷の瀰縫策
這般擾亂の原因は種種にして一槪に論ずることを得ざるも各
地方官の苛稅重斂こそ實に其最大要素と認めらるゝを以て韓
廷有司も大に玆に顧みる所あり因て擾亂地方の監守府使郡守
縣監に至るまで一大便迭を斷行し供て聊か亂民の心を和らけ
んかと萬一を僥倖するものゝ如く先づその第一着として政府
は現任全羅道監司を罷め新に外務協辨金鶴鎭を以てその任に
該らしめ急速赴任せしむるてとに決定したりしよし同氏は當
年旣に耳順の齡を超へたるの老骨にして敢て稱すべきの才能
なしと雖夙に韓廷內に在りて淸操潔白を以て朝野に尊敬せら
るゝ人なれば氏の赴任は全羅一道の地方民をして幾分か怨を
解かしむるに足らんか