○巡邊使と廉察使との出發
韓廷は全州の陷落の以前其危急なることを聞き大護軍李元會
を以て兩湖の(全羅慶尙の二道)巡邊使となし機に隨ひ變に應じ
鎭撫に盡力すべきことを命じ又行護軍嚴世永を以て廉察使と
し國王の綸旨を奉じて忠淸全羅慶尙三道の民情を視察せしむ
而して巡邊使李元會は平安監營の兵丁五百統御官の兵丁二百
を率ひ六月二日京城を發し陸路戰地に向り兵丁の京城を離る
ゝや悲哀に堪へざりしと見へ泣涕するもの多く何れも此行を
願はざるものゝごとく漸やく慰撫して出發せしめたりといふ
出陣に際しては喜こび勇み跳り無り屍を踏て進むは勇士の常
なるに朝鮮の官吏今此の如し軍陣の血祭りに不▣の血淚を灌
ぐその東賊の爲めに一事の下▣▣せらるゝもの亦た▣しひに
足らざるなり