○淸兵派遣の實數
今回東學黨の擾亂につき韓廷の力遂に能く之を鎭壓すること
能はざりしと見へ淸國に向て援軍の派遣を哀求するに至りた
る次第なるが淸政府がその請求により出兵したる員數は一萬
人とのことなれども少しく誇張の言なるべくその實六七千人
と見る方至當なるべし元來李鴻章統督の下に在る軍隊は大略
歐風の訓鍊を經たるものにして其銃器の如きも總て精新を尙
ふかたなれども事の實際より見るときは決してさはど恐ろし
きものにあらず其內部には種種なる弊實のあり殊に之か將官
たるものは常に定員の內幾何を減じて其費額を私するの風な
れば一萬と稱するも大槪六七千位を云ふものなれば今回もま
た之より推し料るときは其實數は六七千位のものと見積れば
大差なかるべきか