日韓兩國攻守同盟條約
日本は其兄國たり。朝鮮は之が弟國たり。兄弟同氣
以て互に相援ひ相護るは、固より當然にして、怪むに
足らさること勿論なり。本月十一日の官報を以て、日韓
攻守同盟條約書は、之を中外に公宣せられたり。」………
▣ふに、朝鮮は、旣に本年七月を以て、斷然淸廷と其
交を絶ち。而かも、我日本帝國に托するに其領地領
海に於る淸兵撤去驅除放逐の事を以てす、是れ朝鮮は
固より旣に支那と敵たるの事實を顯はしたる者なり。
然は則假令此攻守同盟の成文條約なる者無しと雖も、
實際に於ては則十分同盟たりしことは明らか也。………
抑も此攻守同盟は、元と陰險蚕食的野心に出でたる者
に非ず、他無し。唯是れ韓の獨立自主を、保護し。以
て、永久獨立の基を鞏固にするの目的に出づるが故に
苟も韓の獨立自主を鞏固にして宗國を僭稱する淸の
干涉を絶たば其目的や遂げたりと謂ふべし帝國の俠固
より攻守同盟の名の下に保護國の實を行はんとするも
のに非ず誠に韓の眞に獨立自主の邦たるを欲するが爲
に兵を出して力爭するのみ則ち淸兵境外に退きて復
た再來の勢なく從て韓の內地に干涉するの能力を失は
ん乎永く此條約を存して隱然保護國の任を取るの猜疑
を招くの要なし。』
然れども若し之を以て淸兵だに境外に逐攘せば則ち
我が攻守の任足るの意なりとせん乎是れ大謬なり帝國
の朝鮮の爲にする猶淸兵の撤退を以て足れりとせず必
ず淸が再び兵力を挾みて自稱宗國の權威を振ふなき
に至らんことを期す乃ち帝國の淸に對する交戰的干繫に
至てはたとひ彼れを覆滅せざるまでも彼れが屈するま
では斷じて進行せざるべからず則ち淸兵遠く韓疆を離
れて我軍長驅之れを追ふに方りても韓は我兵の進退及
び其糧食準備の爲に及ぶ丈の便宜を與ふるの義務ある
や固より疑を容れざるなり第三條に於て本約廢罷の日
を淸兵韓境を撤退するの時と定めすして淸國に對し平
和の條約成るの時としたるもの亦蓋し之が爲ならんの
み而して平和の條約なるものは素より彼れ屈して媾和
したるの條約たるべきは固より喋喋を待たず。』
且つ夫れ支那は、今回北京城の陷落と共に一時大に屈
服するとも、他日重て朝鮮を侵略すること、必ず之れ有
らむ。故に豫め此覺悟無かるべからず。』