19篇
對韓政策と各派
井上伯朝鮮に全權公使となりてより全力を傾盡して、
韓廷の爲めに畫策し、其結果着着事實の上に效を奏し
て、朝鮮の面目を一新するも遠きにあらざるが如し、
左りながら在野の政黨中には、當局者に違算あらんこと
を慮りて、多少の注文を爲すべしと主張する者と、對
韓政略を質問すべしと唱ふる者あり、改進黨は同盟各
派と交涉の上、左の對韓政策を建議案として議會に提
出せんとしたるに、革新黨は其不可を論じ、國民協會
も姑く當局者に一任して容喙せざるこそ得策ならんと
主張したる爲めに、交涉破れたるを以て、改進黨も建
議案提出を見▣▣たりといふ。建議案の相談は▣らざ
りしも、政府に對韓政略を質問せんとする論者は、改
進黨員外にも少なからざる由に付、不日質問書となり
て現はるべしといふ、改進黨の對韓政策なるものゝ要
領は、左の如し。
對韓政策
一 運輸、交通、警察、病院等の類凡そ物質的文明の利益を全國に普
及せしむるを以て最先の急務とし敎育、宗敎、美術等凡そ精神的
文明の事業は漸を追て之に着手すべし
二 帝國政府は速に朝鮮內地の叛亂を鎭定し且つ充分の軍隊を駐屯し
て頑民の侮慢を豫防し良民を安堵せしむる事
三 目下急要の經費は帝國之を貸與し以て朝鮮の財政を整理せしむる
事
資金貸與の方法
甲 議會の協贊を得て帝國政府之を貸與す
乙 帝國政府の保證の下に我資本家をして急速に朝鮮銀行を設立せし
め該銀行をして必要の金額を貸與せしむ
但し帝國政府は韓廷を說て該銀行に紙幣發行權を許與せしむる
を要す
丙 帝國政府其利子と返濟期限とを保證し我が資本家をして隨意に貸
與せしむ
中央政府改良
一 宮廷と政府との區別を明にし萬機の政令は國務大臣をして悉く其
責に任ぜしむる事
二 門閥を廢して人才を登用する事
但し纖巧なる官制改革の如きは方今一大禁忌たるべき事
三 軍制を定め兵士を訓練して少なくとも內亂を鎭定するに足らしむ
る事
四 簡明なる法律を制定し裁判所を設くる事
地方政府改良法
一 各道に三四の府縣を置き知事を以て地方長官と爲し其れより以上
の官職は總て之を廢する事
二 地方長官の權限は粗ぼ我が知事と同一ならしむる事